三保の松原 羽衣の松の調査

木守樹木医

2015年02月28日 13:47

 
 

 平成27年2月26日から27日の2日間、日本樹木医会静岡県支部と静岡県樹木医会合同による三保の松原 新・羽衣の松の根系を中心とした調査研修会に参加しました。この調査は、静岡市からの依頼によるものです。26日は朝から雨でしたので調査の準備を行い、27日は晴天に恵まれたため作業ははかどりました。主な調査の内容は、根系の伸長範囲、土壌断面、土壌硬度などでした。
 調査の結果、意外なことに、表層に食根性害虫の幼虫が多く見つかりました。また、土性は、深さ1m以下まで単一な砂土であり、人による踏圧で締め固められた土壌層には根がありませんでした。また、以前炭を埋設した所には細根が集まり、外生菌根菌との共生が認められました。炭の効果はここでも実証されています。
 マツの仲間は、数億年前に地球上で繁栄した植物です。当時は腐植も少なく、厳しい環境の中で生きていくために、マツの仲間は早くから外生菌根菌との共生をしていたものと考えられています。マツの根毛でも入っていけないような土壌の隙間に外生菌根菌の菌糸が入り、土壌粒子に吸着されている水や養分を吸収してマツに与え、その代わり、外生菌根菌はマツから光合成産物をもらっているのです。
 ところが、数千万年前から被子植物が繁栄し有機物が多く堆積されるようになると、外生菌根菌は腐生菌に負け、その結果、マツは生息域を追われ続けることになります。
 日本の海岸林は、長い間、人の手によって保護育成されてきました。もし、マツを自然にだけ任せておいたとしたら、マツはどうなっていたのでしょうか。さらに現代は、外国から侵入したマツノザイセンチュウがマツを壊滅的な危機に陥らせています。
 海に囲まれた日本の「白砂青松」といわれる風景は、誠に情緒があり富士山によく似合います。三保の松原の美しい風景と防災機能を後世に残していくことは、今を生きる私たちの使命であると強く感じた研修会でした。

         

 

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