2016年10月11日
ご神木の安全処置(2)
(ご神木の安全処置(1)よりつづく)
【処置後のご神木(西側)】
傾斜し、腐朽した主幹を伐採したため、幹折れの危険は低下しました。
後は、伐採した主幹の下部の腐朽防止と残した幹の良好な成長を促すことになります。
【伐採した主幹の断面】
伐採した主幹の断面を調べたところ、生きているのは周りだけで、あとはスポンジのように腐朽していました。
【処置後のご神木(東側)】
伐採した主幹の下部から、萌芽枝がでてきました。光合成を行い、根までエネルギーを供給できるので、下部の腐朽を少しでも防げるのではないかと期待しています。
この度、処置してから9ヶ月たち、3回目の殺菌癒合促進剤を塗布しました(H28.10)。
2015年06月05日
サクラの名所復活を目指して(3)
富士市広見公園のサクラの名所復活を目指して、富士市みどりの課とともに平成26年秋にサクラ52本の調査を行いました。
その結果に基づいて、平成27年3月に、幹周り半径3m範囲に①土壌耕耘・整地 ②土壌PH調整のための苦土石灰投与 ②化成肥料の施用 ③溶リンの施用 を行っていました。
この写真は、その内の1本の平成27年6月4日現在の様子です。葉の量が多くなり、葉の色も濃くなりました。
樹勢回復処置後のエドヒガン
この写真のサクラも上の写真のサクラと同じ樹勢回復処置を施していました。
かなり樹勢が衰退していたのですが、枝の量が多くなり、葉の量も多くなりました。明らかに樹勢回復状態にあります。
今後は、富士市みどりの課とともに、サクラをよく観察しながら季節ごとの最適な処置を行い、富士市広見公園がサクラの名所として復活することに少しでも貢献したいと思っています。
2015年03月12日
富士市広見公園 桜の樹勢回復をめざして(2)
平成27年3月12日、富士市みどりの課とともに、第2回目の広見公園サクラ樹勢回復措置を行いました。午後からの作業でしたが、富士市から3名参加していただきましたので15本に対して措置ができました。
樹勢の衰退原因は土壌に起因することが多いので、土壌の化学分析データを探していたところ、秋山樹木医が詳細なデータをもっていました。それによりますと、広見公園の土壌(黒ボク土)の化学的特徴は、次のとおりです。
①陽イオン交換容量が大きい。
②リン酸吸収係数が極めて大きい。
③有効態リン酸が少ない。
④置換性カルシウム、マグネシウム、カリが少ない。
また、有効土層(根の張れる土の深さ)が浅く、踏圧により土壌が固結化している箇所が多くなっています。
このため、次の措置を行いました。
①土壌の耕耘
②ようリン、苦土石灰の施用
③化成肥料の施用
さらに、土壌改良にはバーク堆肥や炭の施用、樹木には枯れ枝・不要枝の除去、木材腐朽病・根頭がんしゅ病・てんぐ巣病の治療が望まれますが、今後の課題です。
2015年02月28日
三保の松原 羽衣の松の調査
平成27年2月26日から27日の2日間、日本樹木医会静岡県支部と静岡県樹木医会合同による三保の松原 新・羽衣の松の根系を中心とした調査研修会に参加しました。この調査は、静岡市からの依頼によるものです。26日は朝から雨でしたので調査の準備を行い、27日は晴天に恵まれたため作業ははかどりました。主な調査の内容は、根系の伸長範囲、土壌断面、土壌硬度などでした。
調査の結果、意外なことに、表層に食根性害虫の幼虫が多く見つかりました。また、土性は、深さ1m以下まで単一な砂土であり、人による踏圧で締め固められた土壌層には根がありませんでした。また、以前炭を埋設した所には細根が集まり、外生菌根菌との共生が認められました。炭の効果はここでも実証されています。
マツの仲間は、数億年前に地球上で繁栄した植物です。当時は腐植も少なく、厳しい環境の中で生きていくために、マツの仲間は早くから外生菌根菌との共生をしていたものと考えられています。マツの根毛でも入っていけないような土壌の隙間に外生菌根菌の菌糸が入り、土壌粒子に吸着されている水や養分を吸収してマツに与え、その代わり、外生菌根菌はマツから光合成産物をもらっているのです。
ところが、数千万年前から被子植物が繁栄し有機物が多く堆積されるようになると、外生菌根菌は腐生菌に負け、その結果、マツは生息域を追われ続けることになります。
日本の海岸林は、長い間、人の手によって保護育成されてきました。もし、マツを自然にだけ任せておいたとしたら、マツはどうなっていたのでしょうか。さらに現代は、外国から侵入したマツノザイセンチュウがマツを壊滅的な危機に陥らせています。
海に囲まれた日本の「白砂青松」といわれる風景は、誠に情緒があり富士山によく似合います。三保の松原の美しい風景と防災機能を後世に残していくことは、今を生きる私たちの使命であると強く感じた研修会でした。